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執筆者の写真tsumugi

紡だより Vol.16 一瞬の旬を逃さずに

更新日:2018年8月27日











 「なんて過保護なお嬢様なの!」。さやに入った空豆を初めて見た時、思わず声を上げたことを今でも覚えています。大きなさやをむけば、白い真綿のようなふかかのベッドが登場。そこに楕円形の薄緑色の赤ちゃんがそぉっと眠っていました。彼女は裸んぼではなく、薄い薄い肌着も着ているのです。頂くのが申し訳ないような気持ちにすらなりました。  そんな空豆の料理が紡の献立に登場するのは、せいぜい2週間程度。10月頃に種をまいて、半年以上もかけてゆっくり成長するのに、旬の時期は本当に一瞬。貴重な一粒を季節と共に頂きたいものです。  その空豆の旬の最中、77歳になる父が出雲から、友人に会うため箱根まで旅に出ました。長年大阪で仕事や生活をしていたせいか、以前は歩くスピードがとても速かったのですが、腰を圧迫骨折して以来、筋肉が衰え、姿勢もバランスも悪くなりました。不器用な父は杖を使っても、杖に転んでケガする有様。頭が良く、かつては家族旅行の計画から交通手段、宿泊施設の手配まで完璧でしたが、今や判断力や理解力なども衰えが見え、娘として正直不安だらけでした。  しばし悩んだのが、どこまで手伝うべきか、ということ。切符の購入や荷物や洋服の準備、友人たちとの連絡。私がすれば早いし、安心でき、父も楽でしょう。でも、自分でやろうとする父のやる気を削ぐのもどうか、と思い直し、悶々としながらも後日“チェック”するに留めました。今更苦手なことは頑張らなくてもいいけど、得意なこと、好きなことはやっぱり死ぬまで頑張り続けてほしいのです。(2017.6.3)

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